働き方、進化論
政府は「働き方改革」の御旗を振り、戦後70年以上つづいた年功序列や終身雇用といった制度にメスを入れようとしている。終身雇用が社員の安心感を生み、組織に貢献しようと勤勉に働く―。日本に関するそんな定説は過去の話しだ。
日本経済新聞が「働き方進化論」として、1面で連載を開始した。以下、気になるところをピックアップしたい。
・日本企業は、仕事を主、私生活を従とする考え方を前提になりたってきた。少子高齢化がさらに進めば、仕事を育児・介護・地域活動などと同じウェイトと背負う人も増える。才能や意欲を持つ人材を眠らせない働き方の模索がつづく。
・無限に働く男性会社員を前提に、日本は成長してきた。だが、就業者の4割り以上を女性が占める。高齢者の増加や、外国人労働者の数も増えた。働き手も顧客も、求められる商品やサービスも多様化するなか、イノベーションを生む変革が急がれる。
・働く人のうち、正社員以外は約4割り。企業の寿命が短くなり、正社員はリスクと考える若者も出てきた。
・仕事と生活を明確に分けて調和させる「ワーク・ライフ・バランス」ではなく、あいまいにしてどちらの充足度も高める“ワーク・ライフ・インテレゲーション(統合)」の方が働きやすい人もいる。
・情報技術(IT)によって働く場所の自由は広がる。テレワークを導入しているのは日本は13.9%だが、米国は85%と改善の余地は大きい。「公私混同で結構。1日を仕事と私生活でモザイク状に使えればいい」というビジネスパーソンもいる。
・味の素社では、テレワークを進める。仕事の効率化によって生まれた時間を「将来のための仕事にあてる余裕ある形を目指したい」とする。1日を、朝・昼・夜ではなく、朝・昼・夕・夜と4区分し夕方に家事や育児、勉強などができるように取り組んでいる。同時に、ペーパーレスを進めて、どこでも仕事をできるような仕組みをつくるとしている。
・サイボウズ社では、「離職率が28%まで上昇した。毎週、送別会を開くほどだった」と働き方を見直し動機を語る。その上で大切にしていることは「理想への共感。ウソをつかない文化」を挙げる。
・「就職すれば生涯安泰。それは過去のことだとわかっているのに、そんな考えから抜け出せない中高年は多い」と喝破するのは早大教授だ。「会社員は50代になると役職定年になり、割安な給与で閑職に回される。しかし、転職も難しく会社にしがみつくしかない」と指摘し副業を通じて社外で、やりがいのある仕事を見つけたほうがいいと、アドバイスする。
・元日銀総裁の福井さんは「かつて、高校・大学の進学の際は、何のために進学するのかと真剣に考えていた。それが、高度経済成長期のころから、良い学校に行き大企業に入ること自体が目標になってしまいました。『社会に出る』ことが、いつの間にか『会社に入る』になってしまいました」と想いを語る。
成長期から成熟期へ。そして衰退期を迎えると同時に、次なる成長カーブを描く過渡期。ITやAIといった新しい技術をどう使いながら、われわれ人間が働き生きていくのかといった岐路に立たされている気がしてならない。
一人ひとりが、どうありたいのか。
考え、行動すべき時代が到来している。