『道の駅〜地域産業振興と交流の拠点[増補版]』を読む

関満博さんと酒本宏さんの編者による『道の駅〜地域産業振興と交流の拠点[増補版]』(新評論)を読む。
オビには「市町村に1カ所の時代へ!『道の駅』が進化する理由」とある。
国土交通省によると、道の駅に期待される基本的な機能は3つある。1)道路利用者のための「休憩機能」 2)道路利用者や地域の人びとのための「情報発信機能」 3)地域の町どうしが連携する「地域の連携機能」だ。
具体的には、24時間利用できる駐車場・トイレ・電話が備えられ、さらに地域の情報センター・レストラン・お土産店。最近では地域の農産物の直売所などが基本的な構成要素となってきた。当初は、高速道路のサービスエリアに限りなく似ていたが、その後、地域の特色が強く表現されるものになってきた。
そもそも、道の駅制度は1993年4月に第1回目の登録が行われた。全国で103カ所の「道の駅」が誕生した。その3年前、1990年に広島市で「地域づくりシンポ&交流会」が開催され、その中の「道路部会」の中で「鉄道に駅があるように、道路に駅があってもいいのではないか」という発言があり、これは良い提案だということで、当時の建設省道路局の担当者が本省に持ち帰り、社会実験をしようということになった。その社会実験のリーフレットに次のような思いのこもった「案内文」が記されている。
「車で移動するとき、多くの人が困るのがトイレです。年をとると、急がずにゆっくり走って、途中で疲れを取り戻す休憩場所が欲しくなります。車の中のごみも何処かへ捨てたくなります。用事を思い出して電話を探すことも多いでしょう。時として、FAXを送れるところがないかと、沿道の文房具屋を探したりします。家族で旅行をしている時は、どこか楽しい場所はないか、予定なしで出てきて良い宿はないかと尋ね歩くこともあるでしょう。おみやげに何か地域の良い特産品はないかと探すことも多いと思います。ところで、車で走っていると、いつの間にか町を通り過ぎて、そこがどこなのか気がつかないことも多いものです。もし、面白い町の情報があれば、誰かに会いにいくかもしれません。町が気に入れば1泊するかもしれません。こんなドライバーの気持ちを受けて1つの町に1つの『道の駅』をつくってみたいと考えました。そこには、きれいなトイレ、ごみ容器、休憩施設、電話、FAX、特産品の紹介コーナーなどがあるのです。さらにできれば、地元のオシンコをつまみ、お茶を飲みながら地元話が聞けるような情報センターをつくりたいものです。きっと楽しい交流の場となるでしょう。そして、同じ道路沿いの市町村が連携して、個性ある道の駅を連続させたら、運転手も助かるし、その道路沿線地域全体のまちづくりにも随分役立つことでしょう。気に入った人は、その地域に住みたくなるかもしれません」。
すばらしい内容、文章だ。ちょうど30年前。電話やFAXという機能はちょっと変わってきているが、旅の本質的なことは今も同じだ。
道の駅は全国に1,100カ所を超えるほどに成長した。地域にとっては、一次産品や加工品の直売、6次産業化の推進などを取り込み、成功を収めてきた。
北海道においては、2020年11月現在、128カ所が「道の駅」として登録されている。これは、ダントツ全国1位の数字だ。しかし、道内の市町村数は179なので、カバー率は72%ほどになる。まだまだ、伸びる余地がある。
各市町村の「道の駅」を訪ね歩くと、それはまちのショールームに見える。昔からあるソウルフードや、老舗のお菓子店のスイーツが置かれている。地元の有力企業の加工品が誇らしげに販売されている。加えて、多くの商品に魅力的な案内をするPOP広告が取り付けられている。「当店の売筋ランキング」という案内までも掲示されている。どこかの業者か雑誌社が指南しているのだろうが、それはそれで、買い手にとってはありがたい情報だ。
全国的に静かなブームとなって、道内でも着々と数を増やしていく「道の駅」。地元の経済振興と雇用を含めて、これからの進化に期待をしたい。