「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産登録へ、というニュース

政府が世界文化遺産に推薦する「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、ユネスコの諮問会議が世界遺産への登録を勧告したと、文化庁が発表した。7月にも正式決定される見通しだという。

ひさびさ、明るいニュースが新聞の一面トップを飾る。

この遺跡群は人類史状まれな農耕以前の定住生活や、豊かな精神文化を示す物証になっている。縄文時代は、急激な温暖化がもたらした実り豊かな森や海産物に恵まれ、成熟した社会が1万年以上続いた時代。かつて、学校教育では、縄文時代は人々は狩猟を中心に食料を求めて、移動しながら暮らしたと教えてきた。その常識が覆した。遺跡群は、津軽海峡を挟んで同一の文化圏を形成していた。

・縄文遺跡群は全部で17遺跡。北海道6カ所をはじめ、青森・秋田・岩手の4道県からなる。これらの遺跡群は約15,000年〜2,300年前のもの。狩猟や採集、漁労など、農耕に頼らず定住した縄文時代の暮らしを今に伝える貴重な場だ。全国に点在する縄文遺跡の中でも、4道県には縄文時代の始めから終わりまでの遺跡が揃う。当時の人々の高い精神性を示す環状列石や貝塚などが残る。

・道内の6カ所。
「キウス周堤墓群」(千歳市) ドーナツ状の周堤が造られた集団墓地群。内部には複数の墓穴があり、直径は大きなもので83メートルに及ぶ

「北黄金貝塚」(伊達市) 当時の海岸線の変化と連動した複数の貝塚がある集落跡。祭祀場などを含む拠点集落が出現したことを示す

「入江貝塚」(洞爺湖町) 貝塚がある集落遺跡。難病を患った遺骨が発見され、長期間介護を受けていたことがわかる

「高砂貝塚」(洞爺湖町) 貝塚や土坑墓がある集落遺跡。祭祀場と墓が分離したことを表し、漁労を中心とした生活ぶりも示す

「大船遺跡」(函館市) 100棟を超える住居群と祭祀に関する大規模な盛土遺構がある。祭祀の場が発達したことを示す

「垣ノ島遺跡」(函館市) 約6千年の長期にわたる定住を示す集落跡。住居域と墓域が分離した集落を形成し、祭祀の場とされる国内最大規模の盛土遺構がある

・世界遺産とは、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が人類共通の財産として登録する。3分野あり、文化遺産は歴史的建造物や遺跡が対象。自然遺産は貴重な生態系など。複合遺産は文化と自然の要素を併せ持つものが対象。現在の登録数は1,121件。内訳は文化869、自然213、複合39。

・日本の世界遺産は全部で23件。文化19、自然4。その内、北海道には自然遺産の知床1件が登録されている。