2050年といった未来から見た日本経済のあり方論〜寺島実郎さんの声を聞く

「サタデーどうしん」に日本総合研究所会長の寺島実郎さんの提言が載っていた。以下、大切な部分を抜き書きしておきたい。
・2050年ごろの日本はどのような姿にあるのか。どんな国を目指せばいいのか。2つの視点から自問自答したい。
・1つは世界経済での位置付け。もう1つ米軍基地がまだ存在しているのか。これらは日本の国力、外交戦略、国際関係、安全保障までを問うことである。
・日本経済を見ると、世界全体のGDPに占める割合は1950年は約3%、ピークの1994年は約18%だった。工業生産力モデルの優等生として一気にのし上がった。しかし、2020年には約6%までに下落。今後も下がりつづけ、2050年には2%を切るとの予測もある。
・このままいくと、日本経済は埋没し、繁栄ということばはもう使えない。「健全な危機感」を持つべきだ。コロナ下で経済人に衝撃を与えたできごとがあった。1つは基幹産業に育てたかった宇宙航空産業の核・国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の開発凍結。もう1つはコロナワクチンの国産可の遅れだ。
・部品、素材、加工など要素技術は世界に冠たるものがある。しかし、完成体をつくりあげる「総合エンジニアリング力」の欠落が日本の現状である。今後、自動車は電気自動車(EV)の開発競争で劣化する恐れがある。新しい産業基盤の創出が急務である。
・では、何が経済に必要か。デジタルトランスフォーメーション(DX)、持続可能な開発目標(SDGs)に象徴されるグリーン経済だけでは不十分だ。医療・防災は大変重要になってくる。
・食料自給率は37%しかない。国家の基盤である医療・防災、食料生産から加工・流通までを含めた「食と農」の2つを新しい基幹産業として強化すべきだ。
・日本の人口は2050年には1億人くらいに減ると予測される。全国の均一な成長は望めない。まちをコンパクトにしてネットワークで結ぶ政策を進める必要があろう。さらに加速する地方に、アジアの成長を取り込むなど、どう新しい活力を注入するのか。地域ごとにキラーコンテンツをつくる知恵比べが必要になってくる。
医療と防災。食と農業。コロナ下で「観光」には言及されなかったが、アジアダイナミズムを取り込むには必須と思われる。「地域ごとのキラーコンテンツ」。ここが問われている。