「設計事務所の決算ランキング2023」から、全国の組織設計会社の実力を知る

『日経アーキテクチュア』が毎年発表する「設計事務所の決算ランキング」。2022年度の数字が、2023年9月14日号で発表された。
■独立系設計事務所の売上高ランキング 2022年決算 トップ15
1位 日建設計 419億円
2位 日本設計 217億円
3位 梓設計 123億円
4位 久米設計 119億円
5位 山下設計 83億円
6位 日企設計 78億円
7位 安井建築 74億円
8位 佐藤総合 73億円
9位 大建設計 71億円
10位 石本建築 70億円
11位 東畑建築 69億円
12位 RIA 61億円
13位 松田平田 59億円
14位 類設計 52億円
15位 内藤建築 45億円
上位の順位はほぼ変わらない。多くの企業が増収を果たした一方、売上高最上位の日建設計は12%のマイナスを記録した。加えて、9割の会社が人材不足を感じると回答。設計事務所にとっても、人材確保は喫緊の課題だと同誌は伝える。
続いて、用途別売上高ランキング。
上位、5位までの会社を列記したい。
■庁舎
1位 山下設計 18億円
2位 佐藤総合 16億円
3位 久米設計 12億円
4位 石本建築 11億円
5位 東畑建築 11億円
■文化施設
1位 日本設計 18億円
2位 日建設計 15億円
3位 佐藤総合 14億円
4位 石本建築 13億円
5位 久米設計 10億円
■教育・研究施設
1位 綜企画 32億円
2位 類設計 27億円
3位 石本建築 23億円
4位 安井建築 22億円
5位 日建設計 19億円
以下は、昨年、2022年の記事。

『日経アーキテクチャ』という建築業界に特化した専門雑誌、2022年9月8日号に「設計事務所白書2022」が特集されていた。設計会社の経営動向調査。総合売上高ランキングや部門別の売上高などが調査されており、各事務所の特徴が見えてくる。

総合の売上高でグラフにしてみる。最大手の日建設計はダントツである。2位以下を倍のスコアで凌駕している。2位グループはNファシ・三菱地所設計・日本設計が占めている。その次、3位グループも3社である。梓設計・久米設計・JR東日本設計だ。その後は、山下・日企・安井・佐藤総・大建・石本・RIA・松田平田 といった大手組織設計事務所がしのぎを削っている。
記事では、独立系とグループ系とを合わせて集計していたが、ここではその2つを分けておきたい。
■独立系設計事務所の売上高ランキング 2021年決算 トップ15
1位 日建設計 479億円
2位 日本設計 176億円
3位 梓設計 123億円
4位 久米設計 116億円
5位 山下設計 75億円
6位 日企設計 70億円
7位 安井建築 70億円
8位 佐藤総合 68億円
9位 大建設計 67億円
10位 東畑建築 65億円
11位 石本建築 62億円
12位 RIA 59億円
13位 松田平田 56億円
14位 類設計 51億円
15位 あい設計 41億円
各社の特徴を見るために、最も売上高の多い建物用途とその金額を見てみよう。
日建設計は「事務所」部門が最も多く219億円。総売上高の45%を占める。2位の日本設計も同様、事務所部門で83億円と約5割を占める。3位の梓設計は「生産設備」で20億円。4位の久米設計は事務所で30億円。5位の山下設計は「庁舎」部門で17億円。
ちなみに、「住宅」部門が強いのは6位の日企設計で32億円。「教育・研究施設」が強いのは、東畑建築と石本建築の2社となっている。
いわゆる「大手組織設計会社」とはこの15社のことをさすのだろう。
ぜんぜん本文とは関係ないけれど、みごとに社名が漢字ばかりが並ぶ。カタカナの社名はごくわずか。歴史を感じる業界だ。
つづいて建物用途別売上高のトップ10
■庁舎 売上高ランキング トップ10
1位 山下設計 17億円
2位 佐藤総合 16
3位 久米設計 10
4位 大建設計 10
5位 梓設計 10
6位 石本建築 9
7位 東畑建築 8
8位 日建設計 8
9位 日本設計 7
10位 あい設計 7
■文化施設 売上高ランキング トップ10
1位 日建設計 21億円
2位 佐藤総合 13
3位 久米設計 11
4位 日本設計 9
5位 石本建築 7
6位 山下設計 7
7位 東畑建築 6
8位 梓設計 6
9位 INA 6
10位 RIA 6
■教育・研究施設 売上高ランキング トップ10
1位 類設計室 30億円
2位 綜企画 27
3位 石本建築 24
4位 日建設計 22
5位 東畑建築 17
6位 久米設計 16
7位 山下設計 16
8位 三菱地所設計 16
9位 日本設計 14
10位 安井建築 14
売上のランキングがつづいた。次に資格者の数を見てみよう。
■一級建築士の数 ランキング トップ10
1位 日建設計 983人
2位 日本設計 515
3位 久米設計 363
4位 山下設計 266
5位 石本建築 217
6位 大建設計 210
7位 東畑建築 210
8位 松田平田 205
9位 安井建築 204
10位 あい設計 140
ちなみに、グループ系の会社もあげておこう。
■グループ系設計事務所の売上高ランキング 2021年決算
1位 NTTファシリティーズ 211億円
2位 三菱地所設計 199億円
3位 JR東日本建築設計 103億円
4位 東急設計 47億円
5位 日立建設設計 42億円
あまり関係ないかもしれないが、「創業年」でランキングをつくってみた。
1位 日建設計 1900年/明治33年
2位 石本建築 1927年/昭和2年
3位 山下設計 1928年/昭和3年
4位 松田平田 1931年/昭和6年
5位 久米設計 1932年/昭和7年
5位 東畑建築 〃
7位 佐藤総合 1945年/昭和20年
8位 梓設計 1946年/昭和21年
9位 大建設計 1948年/昭和23年
10位 日本設計 1967年/昭和42年
業界最大手の日建設計はさすがの社歴。つづいて昭和ひと桁の、まもなく100周年を迎える老舗事務所が並ぶ。意外にも、日本設計はずっと後になって設立された会社だ。それでも、創業55年と一般の会社に比べれば、充分に長い。

■アプリ「建築探訪マップ」に掲載される「建築家の一覧」のランキング
同アプリには収録されている建築は110,00件以上。現代建築を中心にアトリエ系から組織系設計事務所の作品まで、全国の建築がもらさず収録されている。誰もが知るメジャーな建築物から巨匠が手がけた幻の建物まで、日本全国のあらゆる建築を収録。建築ファン・建築家・建築を学ぶ学生など、全ての建築好きはもちろん、旅行先の観光や美術館探しにも使える、とされている。その中から、大手組織設計事務所の部分だけを集計してみた。(2023年3月時点)
1位 日建設計 378件
2位 日本設計 161件
3位 石本建築 150件
4位 佐藤総合 115件
5位 久米設計 110件
6位 山下設計 101件
7位 梓設計 71件
8位 安井建築 51件
9位 東畑建築 46件
10位 松田平田 40件
11位 RIA 38件
12位 類設計 17件
13位 大建設計 14位
14位 あい設計 3件
15位 日企設計 1件
■グッドデザイン賞の受賞ランキング
「G」マークでおなじみのグッドデザイン賞。建築部門もあって、各社がそれぞれの建物で応募・受賞している。その受賞数を集計、ランキングしてみた。各社のデザインに対するこだわりが現れているのかもしれない。
1位 日建設計 136件
2位 日本設計 78件
3位 久米設計 43件
4位 佐藤総合 35件
5位 石本建築 24件
6位 梓設計 19件
7位 山下設計 17件
8位 松田平田 15件
9位 安井建築 14件
10位 RIA 12件
11位 大建設計 7件
12位 あい設計 2件
13位 類設計 1件
東畑建築 1件
15位 日企設計 0件
組織設計事務所とは。『建築学生の[就活]完全マニュアル』(エクスナレッジ)によれば、「東京や大阪に拠点を置く全国規模の設計事務所。華やかな大規模物件を担当できるうえに高待遇で、大手ゼネコン設計部と同様、入社難易度は極めて高いようです。構造・設備部門も内部に抱えています」とある。
それぞれに得意分野と個性があり、入社難易度が高い建築業界の花形、とも形容される。
自分のやりたい分野にあった事務所(会社)に出会えるよう願っている。